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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第9章 仮契 〜忍契〜


「澪ちゃん。澪ちゃん、起きて。飯…」

22時を過ぎた頃、帰ってきた副隊長が私を起こしに来る。眠ってなどいなかった。ただ布団の中でジッと震えていた。

「……食べなきゃ、ダメですか?」

「昼も全部食えてへんやろ?」

私が副隊長が作ったご飯なら食べれるからと、毎回作ろうとしてくれる。

布団を被ったまま抱えられて、膝に座らせられる。
顔見せてと言われるが、こんな顔、見せられるはずない。

どんな取り繕っても、声は震えていた。それで彼は気付いたのだろう。泣いていると。

「可愛ええ顔見せて?」

布団の上から頭を撫でられて安心していく自分が、単純過ぎて本当にバカだなと思う。この人に気持ちはないのに優しさに縋る自分が、酷く惨めに思えた。

布団に涙を拭って、少しだけ顔を覗かせた。

「あ、出てきた。でもまだ見えへんよ」

片目だけ出して副隊長を見つめる。優しい顔をしていた。

もうやめよう。この人を困らせたくない。負担になりたくない。ちゃんとご飯を食べて、ちゃんと寝る。自分で出来ることは自分でしなきゃ。

布団から腕を出して首に抱きつき、いつも副隊長がするように首筋に吸い付いた。
私だけついてるのもおかしいだろう。

思いっきり吸って離し、吸ったところをぺろぺろと舐めた。

副隊長の隊服のファスナーを下ろし、香水の匂いが染み込んだ物を脱がせて、上半身裸にする。副隊長は抵抗をしなかった。

露わにした肩に噛み付いて濃く跡を残す。普段は見えない場所。つける意味がない場所。
副隊長が痛みに息を呑む音が聞こえた。

「そない妬いとるん?アヤに会って欲しない?」

頷けるわけがないだろう。私にあなたを縛る資格はない。

そう聞くくせに、会って何をしているかは言わなかった。

歯を離して、肩に顔を埋めた私の後頭部を優しく撫でた。
首筋は副隊長の匂いがした。
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