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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第9章 仮契 〜忍契〜


明日、どうしよ…あの場にいた人たちがネットに書き込んだら…あんなの、どう見ても浮気現場に見えてしまうだろう。

家に帰ってきてシャワーを浴びてから、自室に駆け込んだ。
ほら、帰って来ないでしょ。あのまま"アヤ"と一緒にいるんだ。

わかってる、わかってるのに好きなのをやめられない。
口から勝手に『好き』が零れていく。目から苦しみが零れていく。心臓がぎゅっと締め付けられて、モヤモヤする。

布団に潜り込んだ。玄関で待つなと言われたから。
私の気持ちに気付いてるくせに、どうして何も言ってくれないの?

「痛い……」

胸のところの服をぎゅっと握った。

指輪を外して投げ捨てようとしたが、そんなことは出来なかった。これは私たちを繋ぐものじゃなくて、私があの人を守る物だから。

指輪を机に置いて、布団の中で震えていた。

今までなんとか耐えていたけど、何故か今日は無理だった。いや、耐えられていなかったかもしれないけど。
あんなに優しくされた後にあんな場面を見てしまったら、耐えることなんて出来ない。

涙が布団に染み込んで、冷たかった。
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