• テキストサイズ

偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第9章 仮契 〜忍契〜


「素うどんにしとき言うたやろ?食えるん?」

食堂に来て箸が進まない私を見た彼は、耳元で優しく言ってくれる。

副隊長は私の体調を気遣って素うどんにしろといつも言ってくれるけど、新婚で素うどんなんて食べてたら、周りに心配されそう。だからいつも、天ぷらうどんにしたりしている。

副隊長は今日は焼き魚の気分のようで、焼き鮭定食を食べている。

今までは無理やり食べて戻していたけど、優しく接してくれている今なら、甘えてもいいのでは…と思ってしまう。だから、えび天を箸で持って副隊長の口元へと持っていった。

「あーん……食べて?早く、落ちちゃう…」

呆れながらも彼は口を開けたので、1本丸ごと突っ込んだ。

「おまっ…あふぉ!!」

笑いながら聞こえていないフリをした。副隊長ははふはふしながらえび天を食べている。熱そうだな…と他人事のように見ていた。

優しさで2本目を箸で持って、少しふーふーと冷ましてあげる。ある程度、冷めたかな?というタイミングでまた、あーん…と差し出した。

「丸ごとは無理やからな?わかっとるやろな?」

え?振りですか?なるほど…これが関西のノリ…。
そっと口の中に入れて、全て放り込んだ。

「なっ!……はふっ…ふっ…ほんまに熱いねんて!」

怒っているが声のトーンは全然怒っている雰囲気を感じない。
/ 410ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp