第9章 仮契 〜忍契〜
副隊長が作ってくれたご飯を食べながら、目の前の愛しい人を見つめた。昨日からの甘い雰囲気に浸りながらも、いつまで続くかわからずに不安になる。
私が依存してるから寄り添ってくれているだけ。そうわかっているのに、それを本物の気持ちにして欲しかった。私に心を奪われて欲しい。私だけを見ていて欲しい。他の女に会わないで。
心臓がぎゅうっ…となりながら、過ぎていく甘さに溺れていた。
副隊長の手元をジッと見つめて、ベーコンエッグトーストが吸い込まれていく口を見つめた。その唇と何度も触れ合った。
キスを思い出して、胸が高鳴っていく。触れたい。そう思うのに、手を伸ばすのは怖かった。
「…そない見られると、照れるわ」
照れるように笑って、食いたい?とトーストを差し出してくる。私が食べてるのはお粥。少しだけなら食べても大丈夫かな…。
差し出されたトーストを持つ手に両手をそっと添える。トーストと副隊長の顔を交互に見ながら、歯型に口をつけた。 その瞬間、副隊長の口角が少し上がってドキッとした。
またわざと自分が口をつけた部分を向けてきたんだ。私だけドキドキしてるのが悔しくなって、トーストを持つ指を咥えた。甘噛みをして副隊長を見上げる。
「それ…やらしいで。朝から興奮させんといて…せっかく治めたんや」
副隊長の目は開いていて、しっかり私を捉えていた。
指を口から出し手を掴んだまま、汚れた指先をぺろぺろと舐める。副隊長は溜め息をつきながら、目を泳がせていた。
「せやから、言うたやん。ええの?襲うで」
彼が本気でそんなことをしないとわかっていながらも、ほんの少し恐怖を感じる。それでも、軽く笑って流した。嬉しさもあったから。