第3章 重奏
「朝霧、ちょお付き合うて」
訓練や話が全て終わり、保科さんが私に声をかけてくる。どうやら、亜白隊長からおつかいを頼まれているらしく、私も一緒に来ないかと誘ってきた。
ついていくと商店街の中に入っていき、乾物屋さんを見つけるとそこに入っていく。
お店の人と話す彼は親しげだ。よく来てるんだろうか。スルメを買った彼は袋を持ってお店から出るので、私も慌ててついていった。
「なぁ、甘いもん好き?」
「え?まあ…それなりに?」
ほな行こかと商店街を出て電車に乗り込む。
ふと、考えてしまった。2人きりで買い物…これはデートではないのかと…だが、保科さんはそんなことを思っているはずもないので、慌ててその考えを振り払った。
「さっきはごめんな?まだ怒っとる?」
先程、揶揄い過ぎたことを言っているようだ。私が緊張してほとんど喋らないから勘違いしているのだろう。
ふるふると首を振って答える。よかったわと笑った彼の顔を見て、どうしようもなく胸が締め付けられた。絶対にこの気持ちは言わないから、ずっとこんな距離でいて欲しい…。