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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第3章 重奏


「そっちの子は目ぇ閉じて、やる気すらないようやなぁ」

「わっ!なにす…」

いきなり保科さんに腕を引かれ、後ろから腕を構えさせられる。
なんか…近くないですか…。

「ちゃんとやらなあかんで〜。腕はここで腰はこう!」

「ひゃっ!?…やめてください!」

腕だけではなく、腰を両手で掴まれて、思わず声を出してしまった。こうやで…と、腰を掴んでいた手がゆっくりと布越しに私の肌を撫で上げていく。

耳元…肩に顎を乗せる勢いで顔を近付けてくる保科さんの息が耳元にかかって、訓練に集中出来ない。
なんで…他の子はもう少し距離があったじゃん。なんで私だけこんな近いの…。

息がかかる擽ったさに少しだけ甘さが乗った声を漏らし、肩をグッと竦めた。

「ガキのくせに感じとるんか。生意気やなぁ」

「ち、ちが…っ!」

聞かれた…変な声聞かれた!保科さんが変なことしてくるから!
ボソッと潜めた声が耳元で呟かれた。これは指導の域を越えてるだろう…。

「すまんすまん、揶揄い過ぎたわ。ちゃんとやるんやで」

肩をポンと叩いて保科さんはみんなの元へ戻っていった。
私の心臓は早鐘を打ち続けている。
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