第9章 仮契 〜忍契〜
頬を撫でられながらぽーっと副隊長の顔を眺めていた。
「……もっと撫でて?いっぱい触って欲しい…」
本音が…胸の奥にしまっていた言葉がどんどん溢れてくる。
「どこ触って欲しいん?寝惚けとる澪ちゃん、もっとふにゃふにゃにしたろか?」
クスッと笑いながら髪を耳に掛けられて、ほんの少し耳に触れた指先にピクっと反応した。その反応を見逃さなかった彼は、耳触ったると優しく包み込んだり撫でたりしてくる。
さすがに耳は擽ったかった。
「んっ…耳は擽った過ぎる…」
少し指を耳の穴に入れられると、ゾワゾワして思わず肩を竦めて声を出してしまう。
「ほんまに擽ったいだけなん?僕には感じとる声にしか聞こえへんけどなぁ」
甘く低く、耳を撫でたまま囁いてくる。私の身体は素直に反応して、甘い声が漏れた。
耳が熱い…ジンジンする。
「なんや、耳熱なっとるで。興奮してきた?」
ニヤリと笑った彼の顔は、意地悪さが薄れ妖しくなる。ドキッとしながらも、私にそんな顔をしてくれる副隊長に欲が増してくる。
「あ…いっぱい名前呼んで…」
私のその欲に彼は答えてくれた。
「澪ちゃん…澪ちゃん、可愛ええね。僕の澪」
それはさすがに勘違いします。
でも本当なのだ。私はこの人の手に落ちていく。きっと、子供の頃から私は彼に囚われているのかもしれない。
「私はずっと、宗四郎さんの澪だよ」
受け止めてくれる彼に私は微笑んだ。