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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第9章 仮契 〜忍契〜


私が落ち着くと、副隊長はお粥やおひたしを作ってくれた。少しずつ食べていると、優しく見守ってくれる。

「……副隊長、お風呂は…」

「君が寝た後にシャワー浴びるから安心しぃ。やから、ゆっくり食べててええで」

一緒に浴びるか?と軽口を添えながら微笑んでくるる。

負担をかけてしまっているなと思いながら、優しさに甘えていた。心の中でごめんなさいと謝りながら食べ進める。

副隊長は少しずつ減っていく食事を見つめながら、肩や腕を触れさせて、体温を伝えてくれていた。その温かさにほんの少しの恐怖を滲ませながらも、私に触れてくれているのが何よりも嬉しかった。

もう食べられないとレンゲや箸を置くと、副隊長はニコッと笑った。

「偉いやん、ぎょうさん食えたな」

「ん…副隊長が作ってくれたから…」

遅くなってもいいなら毎日作ってやると私の肩を抱き寄せて、胸に寄り添った私の肩を軽く抱く。
優しくするくせに、結局は別の人のところへ行くのだなと虚しさを抱えながら、温かさに浸る。

「もう玄関で待ったらあかんで。飯、食えへんのやったら、寝て待っとき」

出来るだけ遅くならないようにすると少しでも私を安心させようとしてくれる。そこに私への恋心がないとわかっていながらも、この優しさに縋る私はずるいのだろうか。

触れたくても、キスをしたくても、私からは触れてはいけない。副隊長が拒む私に苦しむことになるから。

頭を抱えて少し上を向かせられると、額に優しく触れた唇。
これで恋心がないなんて、副隊長も相当ずるいですよ。

香水の匂いを感じなからも、もう少しだけこの腕の中にいたいと思った。
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