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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第9章 仮契 〜忍契〜


ソファに降ろされて、咄嗟に首に腕を巻き付けた。無意識だった。離れて欲しくない、そんな私の甘えが溢れていく。

「…飯作るから離して?」

「やだ」

甘えるような…敬語で話すことも出来ないまま、彼に縋る手が震える。怖いんやないの?と聞かれても離すことは出来なかった。

息を詰まらせ涙を堪えていると、息を吐く度に苦しく喘ぐ。

私は泣いてなんかない。この人に涙は見せなくないの。今、"お疲れ様"や"おおきに"って意味の涙は流せないから。

泣いていると思っているのだろう、優しく髪を撫でて隣に座った。

「……ごめんな」

それはなんのごめんなですか?帰りが遅いから?それとも…私の気持ちに答えられないから?

依存心や恐怖、安心も全部引っ括めて、あなたへの想いに変わる。

しがみついた腕は、離さなければいけないと思いながら、離すことなんて出来なかった。
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