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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第8章 仮契 〜試契〜


結局一睡も出来ずに朝日が私を包み込む。訓練大丈夫かな、とか、こんな時に初任務があったらどうしようとか考えながら、起き上がって部屋を出ていく。

顔を洗ってから朝食の準備をし、副隊長が起きてくるのを待っていた。作っていると副隊長が起きてきて、手伝うと近寄ってくるが、大丈夫ですと続ける。

「今日はなに?」

肩に顎を置いて手元を覗き込んでくる。副隊長の温度が私の体温を上げていった。大きな反応は見せなかったが、手が少し震えている。

ベーコンエッグを焼いているだけなのに副隊長は美味そうと言いながら頭を撫でて、離れていった。私の手の震えに気付いたようだった。

無意識で触れてすぐ離れていくのは優しさだとわかっているのに、私の心は離れないでと叫んでいた。怖くてもいいから、あなたに触れられていたい。

「あ…ベーコンエッグとクロワッサンです」

「ん、作ってくれておおきに。珈琲淹れるわ」

穏やかな彼の声と共に、穏やかのようで忙しない朝は過ぎていった。

副隊長は、今日も遅いんだろうか…。
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