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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第8章 仮契 〜試契〜


「朝霧…起きぃ。風呂入りや」

どうやら私はそのまま寝ていたようで、お風呂から上がってきた副隊長に起こされた。眠っていた気はしないのだが、副隊長が上がってきたことに気付いていなかった。

私の顔を見て少し眉間に皺を寄せた副隊長は、起き上がった私の隣に座る。

「…僕にどうして欲しいんや」

意味がわからずに首を傾げると、ええから入って来いと言われた。なんだったのだ。

脱衣所まで来て気付いた。まだ目元が濡れていた。副隊長はこれを見て…もう優しさなんていらない。それは、特別ではないから。

ゆっくりとお湯に浸かりながら、心を落ち着けていく。冷えた芯が温まっていく気がした。

副隊長はあの女性と何をしていたのだろう。食事をしていただけとは考えにくい。今はすでに日付けが変わってしまっているのだ。

あの女性とどんな関係なのか知りたい。でも知りたくない。

もう何も考えたくないと目を瞑った。
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