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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第8章 仮契 〜試契〜


お風呂が沸いて、先に副隊長に入ってもらった。あの匂いを取る為にお風呂を沸かしたのだ、先に入ってもらわないと困る。

少し経ってから脱衣所へ行き、副隊長が着替えを持ってきていないのを確認してから、寝室に行って着替えを持ってくる。タオルも一緒に置いておいた。

このガラスを隔てた先に彼がいる。昨日この中で、私たちは…少し考えてすぐに頭を振った。今考えても虚しいだけだ。

私に大人がすることを教えたのはあなたでしょう?最後まで責任を取ってよ…。

意味もない不満を心の中で呟き、脱衣所を後にした。

「……好き」

そう言葉にすればする程、募っていく気がした。溜め込んでおけなくて、吐き出しているのに。

ソファの背もたれにだらしなく身体を預けながら天井を見つめた。
私のこの気持ちは、誰が掬い取ってくれるの?

ソファに倒れて沈み込む。僅かに視界が歪んだ。副隊長が傍にいない安心感から、そのまま冷たい雫はソファに零れていった。
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