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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第8章 仮契 〜試契〜


少しご飯を食べたが、ほとんど入らなかった。

ソファに座っている副隊長の隣に座ると、香水の匂いが鼻にツンっと刺さり気持ち悪くなって、すぐにお風呂を沸かしにいく。

知らない女の匂いをいつまでも残さないで…。

「副隊長、今お風呂沸かしてるんで、先に入っちゃってください」

「ん、おおきに」

少し距離を取ってスマホを弄る彼の隣に座ると無意識にだろうけど、近寄ってきて寄りかかってくる。心臓は早さを増すのに、手の震えと身体の底は冷えていた。

その匂いをさせたまま私に触れないで…そう思っても、私にはどうすることも出来なかった。この嫉妬心も焦燥感も独占欲も、表に出してはいけないものだから。私は彼の、なんでもない。

「あ、すまん…」

気付いた副隊長は私から離れ、ソファの背もたれに身体を預ける。

もう、私のことは求めてくれないのだろうか。触れられたら怖いのに、そんなことを思って不安になる。

胸が張り裂けそうだった。
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