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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第7章 仮契 〜甘契〜


その日の訓練終わり、亜白隊長に呼ばれて隊長室へと急ぐ。何かあったんだろうか…少し心配になりながら歩を進めた。

「指輪が出来た。訓練や任務時以外はつけておけ。」

「「了」」

結婚指輪を作っていたそうで、出来上がったからと渡された。
正直、戸惑いがある。副隊長を怖いままこれをつけていていいのだろうか。わかっている、これは命令。断れるわけもない。自身で偽装結婚の件を受け入れたのだ。

すっ…と指にはめると、シンプルなデザインのシルバーが夕日に照らされて輝いていた。副隊長の左手を見ると、同じ場所で同じ物が輝いている。

少しだけ胸が高鳴る。亜白隊長から渡された物ではあるが、愛しい人とお揃いの物を指にはめている幸福感が募っていった。

失礼しますと隊長室を出れば、すぐに繋がる手。少しだけビクッと腕を引きながらも、耐えて握り返す。

「澪ちゃん、僕今日、何時に帰れるかわからんのや。やから、僕の分の飯は作らんくてええし、先に寝とって」

玄関で待ったらあかんでと軽く笑って釘を刺される。頷いて返し、指先が震えながらも、距離を縮めた。

愛しさも、嬉しさも、不安も、恐怖も残っている。それでも、この指輪と彼の笑顔があれば、乗り越えていけるかなと…少しだけ心が軽くなっていった。
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