第7章 仮契 〜甘契〜
「朝霧、起きや」
愛しい声で目が覚めて、ボーッと副隊長を見つめる。軽く肩を揺すられて起こされた。
今…朝霧って…最近ずっと、澪ちゃんだったのにな。
少しの寂しさを抱えながら起き上がる。すると、副隊長の顔が近付いてきて、肩を竦めながら後退った。
「……ちゅーはええの?」
「いい、です…」
昨夜の副隊長が頭に過ぎり、触れられることに恐怖を覚える。寝て起きても、怖いままだった。
副隊長は私をチラッと見て、そうかと部屋を出ていった。私も急いで着替えて顔を洗いに行く。
顔を洗いご飯を食べて家から出る時に手を握られる。嬉しいはずなのに、やはり怖かった。それでも、外ではちゃんとしなければと思い、握り返す。
耳元で我慢してと囁かれた。すでに私が怖がっていることに気付いているようだ。
そして、そのまま耳元でまた囁かれる。
「好きや…」
全身が震える。この気持ちさえなければ…そう思いながらも、私は本心を口にする。
「私も、好きです…」
もう、どうしていいかわからない。このまま彼の傍に居続けていいのだろうか。副隊長の隣にいれるのは心が震える程嬉しいのに、男の顔をした副隊長が今も頭の中にいる。
自身の気持ちもわからぬまま、ただ手を握って歩いていた。