第7章 仮契 〜甘契〜
副隊長の腕の中にいても、肩や手の震えは治まらず、心の中を恐怖が支配していく。
副隊長はちゃんと止めてくれたのに…やめないと言ってもやめてくれたのに…未だに手首を掴んでいた彼の感触は消えないし、ほとんど喋らずに強引に私の身体に触れる彼を忘れられない。
嬉しいはずなのに、恐怖が勝る。
寝息を立て始めた副隊長の腕から抜け出し服を着て、副隊長の寝室を出た。
自身の寝室に行き、布団を被って握り締める。
「怖かった…なのに好き…」
自身の感情も整理出来ず、枕を濡らしていく。
怖いと思いながらも、彼を求める私の心は未だに止まることなく加速していく。彼が私を愛してくれたなら……。
「こんな気持ち、なくなっちゃえばいいのに…」
こんなにも苦しめる恋心など、なくなってしまえばいい。そしたら、いつまでもあの人の隣で笑っていられる。偽物の妻として守っていける。
朝になっても、副隊長はいつも通りに接してくれるだろうか。怖いけど、触れて欲しい。
矛盾ばかりの心を抱えて、眠るまで枕を濡らし続けた。