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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第3章 重奏


「ほな、行こか」

「へ?……どこにですか?」

「決まっとるやろ〜、食堂や」

訓練を見ていると昼休憩になり、保科さんに行くで〜と手を引かれていく。握られた手が熱い…汗をかいていないか心配になる。

というか、どうして普通に手を繋ぐんですか…この人、距離近い…。
繋がれた手を伝って、乱れた心臓の音が保科さんに気付かれないか心配になった。

「あれ?また真っ赤やん?どないした……はぁん?慣れてないんか。まだまだお子ちゃまやなぁ」

「なっ…すみませんね!お子ちゃまでっ!」

保科さんにとって私はまだ子供…意識なんてしてもらえない。だから、このままでいい。どうせ、いつまで経っても年の差は埋まらないんだから。

「ちゃうちゃう。可愛らしくて、ええやん?」

"可愛い"という言葉に心臓を跳ねさせる反面、心の中は"子供だから可愛い"という引っ掛かりを覚える。
そうですか…と返しながら、ただ保科さんに手を引かれながら食堂へと向かった。


食堂につくと当然のように私の目の前に座り、美しい所作で食事を始める。保科家ってそういう作法にも厳しいのかな…と思いながら私も食べ始めると、歳上は敬うもんやなどともっともらしいことを言いながら、私のおかずを攫っていく。

特に食べられたことは気にしないが、私の皿に保科さんが使っている箸が触れたことを妙に意識してしまう。

「なんや、食わへんのか?全部食ってまうで?」

ニヤっと口角を吊り上げ、細められていた瞳は片方だけ姿を現す。その紫紅の瞳に射抜かれれば、より一層、私の心臓は存在を主張した。

「だ、ダメです!午後持たなくなっちゃう…」

慌ててテーブルに並べられた自身の皿を手に持つ。冗談やと笑った彼は、その後は揶揄うこともせず食べ続けた為、私もちらちらと彼を見ながら食べた。
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