第7章 仮契 〜甘契〜
食事を終え、お風呂を沸かしてからソファに座ろうとすると、流れるような動きで副隊長が私が座ろうとしていたところに座る。
なんだ、椅子取りゲームか?
膝掛けを胸の前に翳して見上げてくる。なんだろうと思い、身体も振り返って見つめる。
「ちゃう……僕のここ、空いとるから座りや!」
「…えぇえ?」
「えぇやない。温めたるって」
ここ…と示された膝を見つめる。ほら、と催促されて、大人しく座った。こんなの…ドキドキするなと言われる方が無理ですからね。
肩に膝掛けが掛かり、後ろから抱き締められるように太腿の上で手を握られる。心臓の早鐘は止まないのに、心が落ち着いていく。
「着替えさせたらよかったな…僕が好き言うたから、着替えんかったん?」
頷くと君の好きなようにしてええねんでと耳元に擦り寄ってきた。副隊長の好きな服を着て隣にいたい。それが私が好きなこと。
それでも、そんなことは言えずに、黙って温められていた。言いたいことも、伝えたいことも言葉に出来ない。
甘さが増していく彼の距離感に戸惑いながらも、私は流されていく。
「……ほんまに僕のこと、好きなってもええで。君となら、ええ家族になれそうや」
その"家族"が何を指しているか、痛い程わかった。