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偽りの私たちが零す涙は【保科宗四郎】

第7章 仮契 〜甘契〜


夕食作りを始めて野菜の皮を剥いていると、クスクスと笑う声が聞こえてくる。わかっている、私の包丁さばきがたどたどしいことなんて。

普通に料理は出来るのだが、野菜や果物の皮を剥くのだけは苦手なのだ。

「料理は美味いんに、皮剥くんは苦手なんやな」

未だにクスクス笑っている副隊長はキッチンに回ってきて、借してみ?と手を差し出してくる。大人しく包丁と野菜を渡すと、スルスルと皮が剥かれていく。

「ちゅーか、なんでピーラー使わんの?人参とかはピーラーでええやろ」

笑う彼はピーラーを取り出し渡してくる。ピーラーでもいいんですが…ピーラーもピーラーで……。

「だーはっはっはっ!君、ピーラーもあかんの?なんなん、可愛ええなぁ!」

皮剥き全般が苦手だ。ピーラーが途中で止まり、ぎこちなく皮を剥いていく。もう、笑われていることは気にしないことにした。

こうやで…と私の手に手を添えてピーラーを動かす。軽く力を入れて引くと、スルッと皮が剥けていった。

距離の近さ等忘れて、私の手で綺麗に剥けていく皮に夢中だった。
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