第7章 仮契 〜甘契〜
夕食の買い出しを終えて帰宅した私たちはソファで休んでいた。いやまあ、休んでいるだけなのだが…膝の上に黒髪が流れる。
いつもの私だったら顔を真っ赤にして慌てているだろうが、今はデートの余韻で、さらさらと黒髪を撫でながら見つめ合っていた。
微笑み合っていると、本物の夫婦かのように錯覚してしまう。彼が私に優しくするのは、彼本来のもので、それと…私としようとしているから。それをわかっていながら、私は絆される。
「ほんまにラザニア作ってくれるん?疲れてないん?」
「副隊長が食べたいと言ったので作りますよ。私のご飯…好きですよね?」
目を薄く開けた彼はゆっくり起き上がって手をつき、頬に触れながら距離を詰めてくる。
「ん…好きやで」
耳元で囁くと首筋に口付けを落として離れていく。
せっかく落ち着いていたのに、私の心臓を暴れさせないで欲しい。勘違いさせないで欲しい。
「ははっ、おもろいなぁ…そない真っ赤なって……勘違いした?」
こんなに酷いことをするのは、私の気持ちに気付いてない証拠。私の気持ちに気付けばこんなことはしないだろう。私から離れていくだろう。
だから、私はこのままでいるの。
「揶揄うなんて酷い…こんなに好きなのに…」
「え…」
「ふふ、勘違いしました?」
やりよったな!と脇腹を擽られて息が苦しくなる。夕食を作るまで休もうと言っていたのに、結局休めないようだ。