第100章 期待〜時透無一郎 冨岡義勇【R強強】
翌朝
不死川は早速動いた。
鬼の気配が薄れ、久々に訪れた穏やかな日常の中、彼は早々に各方面へ連絡を飛ばしていた。
「たまには美味ェもんでも食って、鋭気を養うぞォ」
そんな名目で声をかけられた無一郎、甘露寺、そして伊黒。
もちろん、その席には「ゆき」も連れてくるようにと、不死川らしいぶっきらぼうな伝言が添えられて。
無一郎の屋敷 ―
午前の熱い稽古を終え、汗を拭いながら無一郎が部屋へと戻ってきた。
その瞳が、静かに針仕事をするゆきの姿を捉えていた。
「さっき、不死川さんの鴉が来たんだけど…」
無一郎は少し不思議そうに首を傾げながら、ゆきの隣に腰を下ろした。
「今夜、不死川さんの屋敷で食事会が開かれるから、ゆきも連れてこいだって。任務も減ったし、みんなで集まるみたい」
「不死川さんのお屋敷で…?」
予期せぬ誘いに、ゆきの手がぴたりと止まる。
胸の奥が、理由のない小さなざわめきに揺れた。川辺でのあの切ない再会、そして甘露寺の屋敷で密かに手渡された、手紙…
でも…まさか、義勇さんは来ないよね…
あの口下手で、他者と群れることを極端に嫌う人だ。
「俺には関係ない」と、いつものように背を向ける姿が容易に想像できた。
それに、不死川と義勇の折り合いの悪さは誰もが知っている。
不死川さんがわざわざ彼を呼び出すはずがない…
ゆきは、そう自分に言い聞かせると、張り詰めていた胸の痛みが、ほんの少しだけ軽くなった。
「誰が来るんだろうね。…まぁ、美味しいものでもあるんじゃない? 夕方過ぎに出発するから、支度しておいてね」
そう言い残し、無一郎は再びふらりと部屋を出て行った。
一人残された部屋で、ゆきはそっと胸をなでおろした。
彼が来ないのなら、怯える必要はない…。
川辺に、毎日通っていた義勇さん…来た証のように沢山の小石が積み上げられていた…。
かつて激しく身体を重ね合った日々の温もりが、一瞬だけ脳裏をかすめゆきは頭を振った。
「来ない、よね…」
自分に言い聞かせるように呟いたその言葉は、安堵の裏で、どこか寂しげに響いていた…。
不死川の優しさと、義勇の切ない願いが、その夜の席に隠されていることなど、今の#NAMEには知る由もなかった…。