第100章 期待〜時透無一郎 冨岡義勇【R強強】
その頃、不死川の屋敷では―
「おい冨岡ァ! 飲みすぎだっつってんだろォが、いい加減に止めやがれ!」
不死川が必死に止めるのも聞かず、義勇はただ黙々と酒を煽り続けていた。
盃を重ねるたびに、胸の奥に灯る「ゆき」への切ない想いが、熱い痛みを伴って溢れ出してくる。
川辺でたまたま再会してしまったあの瞬間。そして、甘露寺の屋敷で再び相見え、そして逢引を促すような手紙を、手渡した。
一度は終わったはずの絆なのに、彼女の姿を見て、触れて、直接手紙を渡してしまったからこそ、もう引き返せないほどの愛しさが義勇の身を焦がしていた。
かつて激しく身体を重ね合った日々の温もりが、手紙を渡したことで余計に鮮烈に蘇り、今の義勇の心を狂おしいほどに締め付ける。
荒れていく義勇の姿を、不死川はただの苛立ちではなく、どこか痛ましそうな、深い心配の眼差しで見つめていた。
川辺での再会も、甘露寺の屋敷でのことも、全てを先程聞いた…あの口下手が話してくれるとは思わなかった。
頭をガシガシと掻きむしり、不死川は大きなため息を一つ吐くと、意を決したように言った。
「…おい。お前がもう暴走しねェって、ここで約束するんならよォ…ゆきと会える席を設けてやってもいいぞォ」
「えっ!?」
その言葉に、義勇は顔を上げ、驚きに目を見開いて不死川を見た。
「…本当、か…?」
「あァ? 嘘ついてどうすんだよォ。その代わり、二人きりじゃねェぞ。みんなで飯を食う席だ。場所は、俺のこの屋敷だ」
不死川はバツが悪そうに視線を逸らしながらも、力強く言葉を続けた。
「それなら、あいつだって過度に怯んじまうこともねェだろォが。…一目、会いたいんだろォ?」
川辺や甘露寺の屋敷のように、二人きりで、あるいは感情のままに接触すれば、ゆきの心を再び深い揺らぎの中へ突き落としてしまう。
だが、仲間たちを交えたこの屋敷での賑やかな席であれば、彼女を怯えさせることなく、その姿を見守ることができる。
手紙に込めた義勇の切ない願いを汲みつつも、これ以上の暴走を防ぐための、不死川なりの精一杯の優しさだった。