第100章 期待〜時透無一郎 冨岡義勇【R強強】
激しい余韻が残る中、シーツに沈んだ身体はまだ熱く脈打っている。
無一郎の言う通り、肌を重ねて快楽に溺れている瞬間だけは、すべてを忘れられた。
だけど、求めていた救いは一瞬で、嵐が去った後の静けさに訪れたのは、容赦のない現実だった。
…あぁ、まただ…
切ないほどに満たされたはずの脳裏に、消したはずの義勇の姿がまた、静かに浮かび上がる。
無一郎のぬくもりに包まれている今でさえ、心のどこかで別の誰かを求めてしまう自分。
その愚かしさと胸の痛みをかき消したくて、私は必死に、目の前の無一郎くんを掴もうとした。
「無一郎く…ん、もう一回…できる?」
小さな声で、縋るように紡いだ言葉。
その瞬間、私の髪を愛おしそうに撫でていた無一郎くんの手が、ぴたりと止まった。
いつも冷静で、どこか達観している彼が、目を丸くして驚いている。
普段は見せないその動揺が、彼の顔をみるみるうちに朱く染めていった。
「もう一度…欲しいの?」
どきまぎしながら問い返してくる声は、少し上擦っていて、先ほどまでの男の顔からうってかわり、年相応の少年らしさが覗く。
戸惑いつつも、私の言葉を必死に受け止めようとする潤んだ瞳が、まっすぐに私を捉えて離さない。
「うん…」
小さく頷き、彼の胸元に顔をうずめる。
その瞬間、無一郎の中で何かが弾けたのが分かった。無一郎は、ゆきを愛おしくて堪らないといった表情で見つめる。
「かわいい…。ねぇ、ゆき…そんな風に求められたら、僕、もう我慢できないよ…」
無一郎は、愛おしさを噛み締めながら再び身体を重ねてきた。
「ちょっと待ってね…すぐにもう一回、してあげるからね」
耳元で囁かれる甘い声。
私の心に潜む影をすべて消し去りたいと願うように、無一郎くんの熱い唇が、再び私のすべてを奪っていった。
「今夜は、眠らせない…」