第100章 期待〜時透無一郎 冨岡義勇【R強強】
「お前の気持ちわからん事もねェが…もうあきらめろォ」
不死川の口から放たれた言葉は残酷で、冷たかった。
その瞬間、義勇の瞳に言葉にできないほどの切なさと絶望が滲む…。
胸の奥が、引きちぎられるように痛んだ…。
不死川はそんな義勇の視線から逃げるように、苛立ちまぎれに頭を掻きむしり、月が浮かぶ夜空を見上げた。
「くそォォ! 仕方ねェだろ? お前らはもう終わったんだろォ?」
吐き出された叫びは、義勇の心に深く突き刺さる。
終わった…その事実を、誰よりも理解しているのは自分自身だ。
けれど、理屈で割り切れるほど、このゆきへの愛が消えない…。
「…終わってなど、いない」
義勇の声は震えていた。消え入りそうなほどに儚く…。
「彼女の心から俺が消えても…俺の心には、まだあの温もりが残っている。忘れられるはずがないんだ」
一度は繋がった絆。
共に笑い、互いの傷を労り合った日々
愛し愛され合った日々
激しく身体を重ねた日々
その記憶が、今も義勇の胸の内で愛おしく、そして狂おしいほどに疼いていた。
会いたい
ただ一目だけでもいい、その姿を見て、触れることができたなら…。
そんな義勇の悲痛な覚悟を前に、不死川は小さく舌打ちをし、掴んでいた肩の手をゆっくりと離した。
向けられる眼差しには、先ほどまでの荒々しさはなく、どこか哀れむような、不器用な優しさが混じっている。
「…行けば、あいつが苦しむだけだぞォ…」
ぽつりと溢されたその一言が、義勇の足を完全に止めた。
自分が会いに行くことで、ようやく落ち着きを取り戻し始めたゆきを、再び深い揺らぎの中へと突き落としてしまう。
彼女の幸せを願うことと、自分の逢いたいという衝動。その狭間で、義勇の心は激しく乱れる。
引き返すことも、進むこともできないまま、義勇はただ、ゆきのいる方向の夜空をじっと見つめる。
「冨岡…今夜は堪えろォ…うちに来い酒飲むぞォ」
不死川は、義勇の肩を力強く掴み自身の屋敷の方へ導いた…。