第100章 期待〜時透無一郎 冨岡義勇【R強強】
義勇は、気が付けば足が勝手に動いていた…。
もう誰にも止められなかった。
「ゆきのところへ…」
彼女は今、時透の屋敷にいる。
自分を拒絶し、別の誰かを選んだはずの彼女。
だが、あの石の塔に残された痕跡が彼女のものだとしたら、まだ期待してもいいのか?
辛い目に遭い、行き場をなくして、かつて自分が送った手紙を頼りにあの川辺を訪れたのではないか。
そう考えると、義勇の胸は張り裂けんばかりの心配と、抑えきれない逢いたい気持ちが高鳴った。
いけないことだとは分かっている。
彼女の選んだ道を尊重すべきだと、理性が必死に止めようとする。
しかし、溢れ出す感情に支配された足は、決して止まらなかった。
義勇は、川辺を全力で駆け抜けた。
ーーー
ちょうどその時、月明かりの下で静まり返る街を巡回していた不死川は、ただならぬ速度で走り去る影を捉えた。
木の間をすり抜けるようにして、必死に駆けていくその男の羽織に見覚えがあった…。
「…冨岡ァ?」
不死川は思わず足を止め、眉をひそめた。
いつもは感情を滅多に表に出さず、水のように静かな男が、形振り構わず死に物狂いで走っている。
任務に向かう様子でもない。
ただ事ではない気配を察した不死川の目つきが鋭くなった…。
「おい、何処に行くんだァ? あんな急いで…」
普段の義勇からは想像もつかないその異様な様子に、不死川の胸に言い知れぬ不審と胸騒ぎが湧き上がる。
放っておくわけにはいかない。
不死川は気配を殺し、音もなく義勇の後を追った。
「この方角…?時透の屋敷の方じゃねェか?」
ふと、閃く…
「まさかァ…冨岡…ゆきに、会いに行くつもりなのかァ?」
不死川は、急いで義勇との距離を詰めていった…。