第99章 逢いたくなったら〜冨岡義勇 時透無一郎 【R強】
翌朝、朝食の席に現れたゆきの姿を見て、美月の胸に冷たいざわめきが走った。
ここ一ヶ月以上、すれ違いを続けていたはずの二人。しかし今朝は、無一郎のすぐ隣にゆきが寄り添っている。
何気なくゆきの首元に目をやった美月は、息を呑んだ。白く細い首筋に、生々しく残る赤い口付けの跡…。
長い間、二人が身体を重ねていないことは明白だった。
だからこそ、その印が意味するものが痛いほどに伝わってくる。
昨夜、二人は互いの体温を確認し合うように、深く愛を確かめ合ったのだ。
「…ゆきは、無一郎様の気を引くために、すぐに身体を使う…」
そんな嫉妬を胸の内で呟きながら、美月はゆきをじっと睨んだ。
しかし当の無一郎は、美月のゆきへの視線に気づく様子もない。
それどころか、無意識のうちにゆきの横顔や愛らしい仕草を、愛おしそうに目で追っている。
昨夜の甘い余韻が、無一郎の目からまるで零れ落ちそうだった。
「美月。刀鍛冶の里の件だけど、ゆきも連れて行くから」
「え…?」
美月の目が動揺に泳ぐ。思わず強い口調で反論してしまった。
「しかし、ゆきはもう鬼殺隊を除隊している身では…? 足手まといになるかと思いますが」
美月の鋭い指摘にゆきが小さく肩を揺らすと、無一郎はそっとゆきの腰を引き寄せ、守るように美月を見据えた。
「関係ないよ。ゆきは、僕の一応…婚約者だから」
ゆきは、美月の前で堂々と自分を選んでくれた無一郎の不器用な愛が、何よりも嬉しかった。
「それに…刀鍛冶の里の温泉に、ゆきと一緒に浸かりたいんだ」
先ほどまでの凛々しい柱の顔はどこへやら、無一郎は急に耳まで真っ赤に染め上げると、照れ隠しのようにご飯を口いっぱいに頬張った。
まだ十五歳の、恋を知ったばかりの少年…
その必死で愛らしい姿に、ゆきは切ないほど愛しさが募った。
その時は、義勇に渡された手紙の事などすっかり忘れていた…
『逢いたくなったら、昨日会った川辺に来い。任務がない夜は必ず行くようにする。』
静かな川辺…義勇は毎晩川辺へと通っていた…
来るかどうか、わからぬ愛おしい女を、待つために…
任務がない夜は、毎晩川辺で待ち続けていた。