第99章 逢いたくなったら〜冨岡義勇 時透無一郎 【R強】
「ここの所、君とは何故か上手くいかないね…。僕を選んだ事を後悔しているの?」
頬を伝う冷たい涙を親指でそっとなぞりながら、無一郎は呟いた。
その声は静かで、怯えているようにも聞こえる…。
「そんな事ない…」
「だけど、君は日に日に僕と距離を取る。もう食事だって、一人で部屋で取るようになっているじゃないか」
違う
私はただ、怖かっただけ
無一郎くんと美月さんの距離がどんどん近くなっていくのを見て、自分が邪魔者になったような気がして…もう私が入れる隙なんて、どこにもないと思ってしまったから。
言えない本音が喉に詰まり、言葉にならない…。
俯くゆきをじっと見つめていた無一郎が、微かに胸を痛めるように眉をひそめた。
「僕は、正直君にどう接すればいいのか分からなくなってる。君より正直、美月といる方が楽なんだ…」
その言葉は、ゆきの心を粉々に砕く決定打だった。
美月さんの方がいいんだ。私といるのは、もう彼にとって負担でしかないんだ…。
ゆきは縋るように、頬に添えられた無一郎の手の上に、自分の冷え切った手をそっと重ねた。
「今も苦痛…? 私と二人でいる今も、苦痛なの…?」
震える声で問いかけると、無一郎の瞳が大きく見開かれた。
ドクン、と無一郎の胸が大きく波打つのが分かる。
慌てたように息を呑み、無一郎はそれまでの冷たさを捨て、必死にゆきの肩を引き寄せた。
「そ、そういう意味じゃないよ! 接し方がわからなくなっただけで…ごめん、ごめんよ。泣かないで…」
強く抱きしめてくる無一郎の腕は、頼りないほどに震えていた。
天才と称される霞柱であっても、十五歳の彼はまだ恋を知ったばかりの不器用な少年。
大好きなゆきの涙に狼狽え、女心を理解できずにただただ焦っている…
「嫌いになったわけじゃない…。ただ、君の態度が変だし僕もどう接すればいいのか…わからなくて」
耳元で囁かれる切ない告白に、ゆきは彼の背中にそっと手を回した。
「無一郎くん…もっとぎゅっと捕まえておいてよ…じゃないと…私の気持ちが、迷子になってしまう。」
無一郎は、夢中でゆきを抱きしめた…
「今夜一緒に寝てもいい?」
「うん…」
離れそうになる気持ちを、たぐり寄せるように二人はきつく抱きしめ合った。