第97章 忘れたい〜時透無一郎 不死川実弥【R強強】
暫く泣いたあと、ゆきはゆっくりと落ち着きを取り戻していった。
耳元で聞こえる不死川の荒い鼓動と、包み込まれるような体温。
その温もりに救われながらも、ふと我に返った瞬間、心臓がドキと大きく鳴る。
不死川がゆきを強く抱きしめるあまり、彼の唇が、ゆきの剥き出しの首筋に深く触れていたのだ。
熱い唇の感触が首筋に伝わり、急に気恥ずかしさが押し寄せる。
ゆきは顔を真っ赤にして不死川の胸を押し、そこから離れようとした。
だが、ゆきの背に回された不死川の分厚い腕は、ぴくりとも動かない。
それどころか、逃がさないように力を込められ、さらに深く抱きしめられる。
「あ…あの、ごめんなさい…。取り乱して、変に甘えちゃって…」
消え入るような声で謝るゆきに、不死川は顔を伏せたまま、呟いた。
「気にするなァ。…もう少し、このままだァ」
普段の粗暴な彼からは想像もつかない、熱くて甘い抱擁に、ゆきはどうしていいか分からずあたふたと戸惑う。
不死川の胸の内で、ただただ心音を早くさせていくことしかできなかった。
その時…背後から静かな声が響いた。
「二人で、何しているの?」
その声―
すぐに無一郎のものだと気付いたゆきは、全身の血が引いた…
「む、無一郎くん…」
慌てて不死川の隊服の胸元をぎゅっと掴み、必死にその体を引き離そうと力を込める。
しかし、不死川は無一郎の視線に気付きながらも、すぐには腕を解こうとはしなかった。
義勇への断ち切れぬ想いに泣くゆきと、彼女を妹以上に求めてしまう不死川、そして二人を冷たく見つめる無一郎…
「いつも二人で何してるのかな?って思って見に来たら…君は何?僕が嫌いになった?不死川さんが好きなの?」
不死川が、ゆきに詰める無一郎に割って入った。
「なんでそうなる…慰めてただけだァ」
そう言うとゆきの背中を押し、無一郎の方へやった。
そしてお土産の団子を、無一郎にポンと投げた。
「オメェにお土産買いたいってゆきが選んだ団子だァ。仲良くしろォ!」
不死川は、そう言い残し帰って行った。