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鬼滅~甘い恋の話~時透無一郎、冨岡義勇★R18

第96章 さようなら〜冨岡義勇


ゆきは、結局一睡も出来ずに夜を明かした。

外からは無情にも鳥のさえずりが聞こえてくる。

いつもなら、早朝の冷たい空気を吸い込み、日輪刀を腰に差して義勇の元へ走っていた。けれど今日からは、そんな日常はない…

その時…

「ゆき…起きてる?」

襖越しに聞こえる無一郎くんの声に、私は呼吸を整えて「うん」と答えた。

扉をそっと開けると、そこには桜色の着物を大切そうに抱えた無一郎くんが立っていた。

ニコッと笑みを浮かべながら

「これ、今日から君が着る着物だよ」

桜色…義勇さんが贈ってくれた羽織も桜色だった…もう返しちゃったけど…

同じような色だな…

「着替えたら朝食を用意してあるからおいで」

「うん…ありがとう」

無一郎が去ったあと、ふと視界の端に映ったのは、もう二度と袖を通すことのない隊服だった…。

綺麗に畳まれた黒い布地に、義勇さんの背中が重なって見える。

もうあの人を、恋しくなっている自分に気づく…

私は無意識に手を伸ばし、その冷たい生地をそっとなでた。

朝食はしっかりと食べただろうか?

今頃はいつものように、黙々と素振りを始めている頃だろうか。

それとも…塞ぎ込んでしまっているかもしれない…

駄目だと分かっていても、頭の中は、義勇さんでいっぱいだった。

そんな思いをかき消すように、言葉を紡ぐ…

「さようなら、義勇さん」

誰に聞かせるでもなく呟き、ゆきは自身の頬を軽く叩いた。

パチン

しっかりしないと…私は無一郎くんを選んだ

義勇さんとは、もう何もないのよ

忘れなさい

鏡の前に立ち、無一郎が選んでくれた桜色の着物に袖を通す。

「綺麗な色の着物…無一郎くんが選んでくれたんだもの、大切に着ないと…。」

その桜色の着物姿で、ゆきは無一郎の待つ朝食の席へ向かった。

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