第92章 快楽に溺れる日々〜時透無一郎【R強強】
無一郎が自室の襖を開けたとき、ゆきの姿がなかっ
た。
「…ゆき?」
何度呼んでも返事はない。
お風呂だろうか。淡い期待を抱きながら離れへと向かう渡り廊下で、夜の草むらにしゃがみ込む人影を見つけた。
「ゆき!?」
駆け寄る無一郎の声に、ゆきは心臓が跳ね上がるほど驚き、慌てて手紙を隊服の胸ポケットへ隠した…。
どうしよう…泣いていたって気づかれちゃう…怪しまれる
泣き腫らした瞳を隠そうと、ゆきは無一郎の胸に顔を埋めて抱きついた。
「ど、どうしたの…どこか痛むの?」
戸惑いながらも背に手を添える無一郎。
泣いている事を悟られたくないゆきは視界の隅、月光も届かない薄暗い部屋を見つけた、無一郎の耳元で囁く…
「無一郎くん…あっちの暗い部屋に行きたい」
「…え? 何で。お風呂じゃ…」
言葉を遮るように、ゆきは無一郎の唇を強引に塞いだ。
埃っぽい空気が漂う薄暗い部屋へ入り、扉を閉める。
ゆきは無一郎を壁へと押し付け、襟元を激しく掴んだ。
「…今すぐ、私を抱いて。ここなら隠も美月さんも来ない」
泣き腫らした顔を見られたくないのもあったが、義勇からの「愛している」という言葉を、消し去りたくて、ゆきは無一郎に迫った。
「…今日のゆき、すごく変だ。何か隠してる?」
無一郎は眉をひそめ、ゆきの頬を両手で包んだ。
「言いたくないなら、僕なりに確かめるよ」
無一郎は耳元でそう囁くと、ゆきの首筋に深く、吸い付いた。
義勇の影を追い出し、無一郎の体温だけを覚えようと、ゆきは無一郎の髪を強く掴む。
「すごく…積極的だね…もしかして、美月の事怒ってるの?簪を探しに行った事…」
違うけれど…ゆきは無一郎にぎゅっとしがみつきまた唇を、自分から重ねた。
自分を、求めて抱きついてくるゆきが可愛くて愛おしくて無一郎は、胸がいっぱいになった。