第16章 義勇の過ち〜冨岡義勇
「なぜお前のところなんだ」
無一郎は、義勇の目の前に移動した。「ゆきを鬼から救ったのはこの僕です。ゆきには身寄りがなく両親も殺されていたので僕のところに引き取りました。元は継子だったし。ゆきの家は僕の屋敷です。」
義勇は引かなかった。「今も上手く生活出来ている。」
「私は嫌です!出ていってほしい!」
百合だった。「霞柱様連れて行ってください。その人を」
義勇の顔を見ながら百合は話しだした。
「その人は、事あるごとに義勇さんを誘惑してきます。毎晩のように体を重ねている事を知ってます。義勇さんが看病している時もその人が誘っていました。それに…」
百合が切ない表情にかわった。
「声が大きくてまるで私への当てつけのようでした…」
無一郎が無表情で口を開いた。
「それで?それは貴方に魅力がないから冨岡さんに相手にされないだけじゃないの?」
百合が恥ずかしさで赤面した。
「何?僕が子供だから聞いて怒ると思ったの?くだらない。」
無一郎は、ゆきの手を引いて自分に抱き寄せた。
「今夜から淋しい夜になりますね。冨岡さん」
義勇もゆきの手を引いた
「全部俺から求めた。一度もゆきから求めてきた事はない。」
無一郎は、天を仰いだ。
「あーもー煩いなー。そんなの聞きたくない」
二人から両手を引かれてゆきは、胸が苦しくなった。
「とにかく今日は連れて帰ります。荷物は後日取にきます。」
義勇は、ゆきの手を離した。
無一郎に手を引かれて屋敷を出て行った。
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それから、義勇はますます話さなくなった。
百合とも口を利かなくなった。百合の顔も見てはくれなかった。
何をしていても虚しい。まるで昔の自分に戻ったようだ。
ゆきの声が聞きたい。髪に触れたい。肌に触れたい。匂いをかきたい。
稽古にあれから一回も来てくれない。警備の任務にだって付いてきてくれたのにそれもない。
時透と稽古してるのか?任務も時透と行ってるのか?
俺の継子なのに…。
「義勇さん…」
あの女の声がする。顔を見たら手を挙げてしまいそうな衝動に駆られてしまう。
「あの子が稽古に来ましたよ…」
義勇の瞳に光がパッと入った。後ろを振り向いた。
道場の入り口にゆきが立っていた