第16章 義勇の過ち〜冨岡義勇
「長い間お稽古来れなくてすみません。」
義勇は、ゆきの元に走り寄った。
「もう腕はいいのか?痛くないか?」
ゆきは、目を合わさず「はい」と答えた。
あきらかに元気になった義勇を見て百合の心は傷ついた。
稽古も終わる時間の夕方になった。「怪我する前の体力にだいぶ戻っているな。良かった。」
「ありがとうございます」
ニコッとはするが、ゆきは目を合わせてくれなかった。
いつも稽古中ずっと見ている百合の姿が、いつの間にかなかった。
この機を逃すまいと義勇は、帰り支度をするゆきを後ろから抱きしめた。
「会いたかった…この髪に体に触れたかった」
嫌がる素振りもなく帰り支度を続けている。
「ゆき?」
するっと腕の中から抜けていった。
「今日はありがとうございました。明日またよろしくお願いします」
何事もなく道場から出て行った…。と、入れ替わりで百合が何処からか帰ってきた。
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なぜゆきはあんな態度だったんだ?抱きしめても無反応だった。嫌がりもしなかった。まるで俺が、見えていないように、、、
義勇は、どんどんお酒を飲んでしまった。
何だ?いつもと酒がなんか違うように。。。感じる。
いつの間にか義勇は眠っていた。頭痛で目が覚めた。腕に髪が触れた。ゆき?夢か?
ゆっくり目を開くと隣に裸の百合が寝ていた。
義勇は慌てて飛び起きた。百合が目を開く。
「おはようございます」
「な、な、な、何してる?」
「覚えてないのですか?昨夜お部屋を訪ねたところ私の腕を引き布団に招き入れたんですよ」
「違う…そんな事していない」
「義勇さんもお召し物着てないですよ」
「やっと婚約者になれました」
その時物音がした。「あの子が稽古に来たんだわ」
義勇は慌てて隊服を着た。
道場は鍵が開いておらずゆきが扉の前で待っていた。
そこに慌てた様子の義勇が現れた。鍵を開けようともたもたしていると百合がやってきた。ゆきに向かってニヤリと微笑んだ。「昨夜やっと義勇さんに愛してもらいました。」
ゆきは、下を向いて「そうですか」とだけ答えた。
そして何事も無かったかのようにゆきは、お稽古の準備を始めた。