第16章 義勇の過ち〜冨岡義勇
帰り道義勇とゆきは話さなかった。義勇は、ゆきをちらちらと見たがゆきはまっすぐ前を見たままだった。
屋敷に戻ると目を真っ赤にした百合が、義勇を見るなり抱きついてきた。
わんわん泣き叫び抱きつく様子を気にもせずゆきは中へ入って行った。
部屋の戸を開いた。そこには、無一郎が座っていた。
「昨日何で吉原まで行ってたの?宇髄さんの鎹鴉から聞いた。」
ゆきは、急に昨晩の義勇との事を思い出しまともに、無一郎の顔を見れなかった。
「ねぇ、ゆきもしかして冨岡さんと同じ部屋で寝たの?」
「えっ?あの」
慌てた様子の顔を無一郎は見て感づいた。ものすごく苛ついてきた。
「ちゃんと俺の顔見ろよ」
無一郎がゆきを部屋の隅に追い込んだ。
「ねぇ…昨日…したの?」
ゆきと無一郎の目がパッと合った。無一郎の目つきも変わる。顎を強引に親指と人差し指で持ち上げられた。
「何で俺が、いるのに体を許すの?」
「あ、あの…違う…」
無一郎は、壁にゆきを押し付けた。
「何で俺をイライラさせるかな?俺が、もし同じ事したらどうするの?そうだな…俺のことを好いてくれてる凛。今夜俺は凛を抱く事しようかな」
「そ、それは嫌」
ゆきが、目を潤ませ訴える。
僕はわかってる。冨岡さんが強引にゆきに…。冨岡さんの力にゆきが敵うはずもない。嫌がりながら無理やりされたんだろうとも思う。
ただ、やはり嫉妬で狂いそうになる。だって元をたどればゆきは、ずっと冨岡さんが想い人だった。
そんな憧れてた存在が自分を求めてくる…
僕の入る隙がなくなるんじゃないのかと不安でたまらない。
僕の事をゆきは子供にしか見えてないような気がして仕方ない。冨岡さんは大人だし…
扉の向こうから声がした。
「時透入るぞ!」
義勇の声だった。
「入っていいって言ってませんけど」
「どういう事だ?ゆきを連れて帰るって」
ゆきも突然のことに驚いた。
「お館様が、婚約者の居る家にいくら継子だといえ一緒に生活するのは、婚約者の百合さんが可哀想だの事で僕の館からこちらに稽古に通うという話になったので今日連れて帰ります。」