第87章 口付け【R18】冨岡義勇
ゆきが、あまりに真剣に自分を心配してくれる義勇の質問攻めに、どう答えていいか分からず気まずい沈黙が流れた…。
「大丈夫です、ありがとうございます。義勇さん…」
そう答えてはみたものの、ゆきの心は無一郎と美月が二人きりで居ることが気になり屋敷の方をしきりと気にしている。
無一郎と美月が今どうなっているのか。気になって仕方がない…
「あの部屋の前で何をしていた?」
義勇の低い声がゆきを呼び止める。
鋭い視線が、ゆきの隠しきれない動揺を見抜いていた。
「何でもないです」と必死に首を振るが、視線はまたふらふらと屋敷の方へ。
その時、廊下を並んで歩いてくる無一郎と美月の姿が目に入った。
「見つかっちゃう…!」
理屈よりも先に体が動き、ゆきは慌てて義勇の手を引いて、中庭の隅にある小さな物置小屋の中へ飛び込んでいた。
物置の隙間から外を覗くと、二人はちょうど縁側に並んで腰を下ろしたところだった
「…」
ゆきは我に返った。
外の二人の様子が気になる一方で、今自分たちが置かれている状況に心臓が激しく鳴り響く…。
古びた物置の中は、大人二人が入るにはあまりにも狭すぎた。
背中を壁に押しつけられ、目の前には義勇の広い胸板がある…。
逃げ場のない密室で、義勇の力強い心臓の音がドクドクと肌に伝わってくる。
私何で…義勇さんまで引っ張ってきて隠れたんだろう…。距離が近すぎるよ…
「ゆき、なぜ隠れる…」
耳元で、義勇の熱い吐息が触れる…。
目の前で義勇さんの大きな体温に包まれている…近い…混乱しちゃう。
狭すぎるので、義勇は体勢を保つ為にゆきの腰に手を添え自身に抱き寄せた…
なおも密着する…
「あ、あの…義勇さん…狭いとこ押し込めちゃってすいません…。」
「時透とあの継子の事、を何か怪しんでいるのか?」
的確な指摘だった。まさしくそうだから…
「時透は、お前と婚約しようとしてるくせに、あの継子とも良い仲なのか?」
「そ、それは…ただの継子だと思うんですが…」
自信なさげに、ゆきは答えた。
義勇は、ゆきの耳元に顔を近づけた。
「時透と婚約するなら真剣に考えろ…」