第86章 無一郎と美月の秘密【R18】
お風呂の湯気に包まれながら、ゆきは少しだけ息をついていた。
義勇からもらった鎮痛剤のおかげで、体のアザは残っているものの、ズキズキとした痛みは引いてきた。
しかし、そんな安らぎのひと時を破るように美月が入ってきた。
「ゆきさん、ちょうど良かった。右手が使えないから、背中を流してくれない?」
怪我を理由にされたゆきは断ることができず、言われるがままに美月の背中を流した。
早く上がって部屋に戻りたい。そう思っているのに、美月にペースを握られ、結局二人で湯船に浸かることになっていた…。
「ゆきさんの白い肌、アザだらけね。水柱様って、案外手加減してくれないの?」
美月の言葉には、ゆきを気遣う素振りなど微塵もなかった。
「私が未熟なだけですから…」
ゆきが力なく返すと、美月は鼻で笑うように言い放った。
「ふーん、自覚はあるんだ」
その時、美月の視線がゆきの背中の一点に釘付けになった。
それは、アザのすぐそばに残る、無一郎がつけた口づけの赤い跡だった。
美月はその場所に、冷たい指先で触れた。
「これ……無一郎様でしょ?」
心臓が跳ね上がり、ゆきは何も答えずに、真っ赤になってお湯から出ようとした。
しかし、美月はその腕を強く掴んで引き戻した。
「無駄よ。今夜、無一郎様はあなたのところには行かないわ」
耳元でそう告げられ、解放されたゆきは、震える体で脱衣所へと急いだ…。
「どういう意味……?」
頭にこびりついて離れない美月の言葉に、ゆきは言いようのない不安を感じながら、逃げるように風呂場を後にした。
どういう意味なの?今夜任務があるのかな…?
モヤモヤした気持ちのままゆきは、濡れた髪のまま部屋へと戻った…。