第84章 柱の命令〜冨岡義勇 時透無一郎【R強】
「誰が身体を売っているんだ?」
低い静かな声が響く
そこには、いつの間にか義勇が立っていた。
男は狂ったように義勇にも訴えた。
「水柱!あなたも騙されているんだ。この女、稽古と言いながらあなたとやましい関係にあるんでしょう? 柱の権力を笠に着て、身体を売って…!」
「ふっ」
義勇は鼻で笑い、吐き捨てるように言い放った。
「俺の継子を侮辱するとは、不愉快極まりない。…今すぐこの宿舎から出て行け」
「出て行くのはこの女の方だ!」
叫ぶ男の言葉を、義勇は冷たく遮る。
「柱としての命だ。貴様は今日から別の宿舎へ移れ。二度と彼女の前に姿を見せるな」
そこへ、義勇の後を追ってきた宿舎の上官・三田が駆けつけた。
三田はかつて義勇の稽古を共に受け、ゆきと共に汗を流したゆきの仲間でもある。
三田は震える男を部下に連行させると、ゆきを見て、それから義勇に向き直った。
「柱すみません…。今宿舎内では嫉妬に狂った連中が根も葉もない噂を広め、収拾がつかなくなっています。申し訳ないですが…落ち着くまでの間、ゆきにはここを離れていただきたい…。」
せっかく義勇さんから離れて暫くして継子も辞退しようと決めていたのに…
肩を落とすゆきに義勇は、声をかけた
「…ならば、俺の屋敷へ来い。前に戻ろう」
何を言っているの?そんな事できないよ…
「…いえ、私は…」
拒絶するそんなゆきを、横から冷たく細い指が、絡めて腕の中におさめた。
「冨岡さんのところには、行かせないよ…」
無一郎だった。ゆきを自分の方へと抱き寄せ、義勇を真っ向から見据えた。
「ちょうど良かった。この機会に婚約し直します」
「何を、言っている。お前達はもう終わった関係だろう。」
義勇が、真剣な顔で無一郎を睨みつける。
「終わってないよ。僕はずっとゆきが好きなままだ。」
「とにかく、俺は認めない…。」
無一郎は、腕の中のゆきに確認する。
「ゆきは、どうなの?婚約について…復縁してくれるよね?」
無一郎くんの真剣な顔…私は今誰が好きなの?
義勇さん…?でも…たとえ義勇さんを好きでも、義勇さんは、しのぶさんとお付き合いしている…。
ゆきは黙り込んでしまった