第84章 柱の命令〜冨岡義勇 時透無一郎【R強】
「…ん、…ふっ、ぁ…っ」
重なり合う唇から漏れる、吐息。
義勇の舌は、逃げようとするゆきの舌を追い詰め、ねっとりと絡みつく…。
口の中の粘膜をなぞり愛撫し、逃げ場のない快楽を強引に与えていく…。
滴る唾液が顎を伝い、畳に小さな染みを作っても、義勇は止まらない…。
覆い被さる義勇の体温が、隊服越しでもとても熱い。
それなのに、義勇は決して唇以外には触れようとしなかった…。
「はぁ、っ……義勇、さん…もう、やめ…っ」
ようやく隙間ができた瞬間に離れようとするが、義勇の体は、びくともしない。
「言わないのなら、また塞ぐだけだ。…このままでは唇が腫れてしまうぞ?」
再び降ってきた口付けは、先ほどよりも深く、激しい。
唾液の音が艶めかしく響き、ゆきの脳内は義勇に支配されていく…。
本当は、宿舎の隊士に茂みに連れ込まれた時に手首を痛めた。隊服のボタンが飛びそうになったのも、その隊士に脱がされそうになったから…。
けれど、言えるはずがない。義勇が自分を特別に扱えば、周囲の目はさらに厳しくなる。しのぶさんと付き合っている話もじきに、隊士達にも知れ渡ると思う…。
いつまでも、私を特別扱いしていれば義勇まで隊士達に好奇な目で見られてしまう…師範を汚したくない…。
「口開けろ…ゆき」
名前を呼ぶ声が、やけに優しい。
抵抗する力を奪うように、大きな手がゆきの指を一本ずつ絡め取り、恋人のように繋ぎ直す。
「はぁっ、ん…っ」
繰り返される吸い付くような口づけ。
何度も唇を含み、噛み、舌を這わされる。
「朝まで、こうして飲み干してやってもいい。…お前の中に隠した言葉を、俺がすべて引き出すまで…」
義勇の甘い声が鼓膜を震わせる。
その頃、屋敷の門前では隠の困った声が響いていた。
「柱はゆき様と次の任務の打ち合わせ中ですので暫しお待ちください。」
「私も、次の任務はご一緒するので丁度良かったです。」
屋敷に上がろうとしているしのぶの姿があった。
「柱に、誰も通さぬよう言われておりますので…胡蝶様でしてもお通しする事はできません。」
「二人きりで誰も通すなとは…怪しいですね…」
しのぶは、不可解な表情を浮かべ屋敷の中へ目を向けた。