第14章 義勇の婚約者〜冨岡義勇 時透無一郎
「きっと稽古がきつくて逃げたんじゃないですか?」
百合が縁側から義勇に言った。
「義勇さん足を挫いたみたいで痛いです。手当してください。」
義勇は、辺りを見渡したがゆきの姿が見えないので仕方なく百合を抱えて手当てしに屋敷に入った。
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ゆきは、依然意識を失い倒れたままだった。腕からは血が流れていた。
「カァーカァー」
無一郎の鎹鴉が無一郎が来れない代わりに様子を見に来ていた。
「タイヘンダワ。ハヤクシラセナキャ」
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義勇は百合の足に包帯を巻いてあげていた。「ありがとうございます」
「痛むか?」
「当分歩けないかも…義勇さん抱っこしてくれますか?」
「必要なら」
「嬉しい」
百合は義勇の首に腕を回し抱きついた。義勇も拒めずされるがままだった。
「ちょっとゆきを探してくる」
義勇が立ち上がった時玄関を激しく叩く音がした。
無一郎が立っていた。
「ゆきは!?鎹鴉が腕を怪我してるって慌てて来たんだ!」
義勇は、頭が真っ白になった。あの木刀の血はゆきの?
手合わせでは俺は当ててない…当たったとしたら?
百合を助けに行くときに技をかけた木刀を放り投げた。
それが当たったのか?
だとしたら大怪我だ…
義勇は慌てて庭に出た。無一郎もついて行った。
「いない…どこだ?」
無一郎の鎹鴉の銀子が二人を呼んだ「コッチヨ」
ゆきがうつ伏せになって右腕から血を流して気を失っていた。
「ゆき!!」無一郎は慌てて抱き上げた。右腕は折れてだらんと力無く地面に落ちた。
冬になりかけている季節で外も寒い中血液も失っているので体が冷たかった。
「大丈夫か?ゆき!」
あー温かい。誰が抱きしめてくれてるの?寒かったよ…誰?声がする…この声…。
「む、むい…ち…」
また気を失った。
暫くしてゆきは腕の痛さで目が覚めた。
「いったぁい」
無一郎が目の前にいた。「無一郎くん…」
「ゆき!大丈夫か?腕痛むか?」
「うん。痛いです…それにしんどい」
「高熱も出ているんだ」
おでこに冷たいタオルを乗せてくれた。
「最近忙しかったんですか?」
「ん?寂しかったんだ?」
「会いたかった…無一郎くんに」
そんな甘えた言葉聞けるとは思わなかった。