第14章 義勇の婚約者〜冨岡義勇 時透無一郎
義勇は、立ち上がった。「ゆきは俺の大事な継子だ。ここからは出て行かせない。」
「わかりました…ただ私とは婚約者らしく接してください。」
その言葉を無視して義勇は玄関の外に向かった。百合が付いてきていた。
「義勇さん!」
抱きついて口づけをした。急な事で義勇も驚いた。たまたまその場にゆきが帰ってきていた。
「す、すみません…見るつもりはなかったんです。」
慌てたゆきは、すぐに自分の部屋に走って行った。
なんだ、やっぱり師範百合さんに心動いていたんだ。可愛いし料理上手だし言うことないもんね。
て、何で私こんな気持ちになるの?私は無一郎くんが好きなんだから…。
翌朝、道場に行くと義勇が先に来ていて正座をしていた。
私も隣に座り正座をした。
稽古もいつもと変わらずお互い真剣にした。ただ休憩の時など前までは百合が来ても無視していたのに、義勇は百合と軽く会話を交わすようになっていた。
百合はお昼に義勇の好物の鮭大根を作り義勇に振る舞った。
私も前に作ったな…とか考えながらそんな仲睦まじい二人をぼーっと見ていた。
午後の稽古中事件が起きた。
義勇とゆきは、打ち込み稽古をしていた。少しでも気を抜くと危ない稽古だ。
そんな中百合は、庭の隅で木になっている柿を取ろうと台の上に乗っていた。手を伸ばした時バランス崩し地面に落ちそうになった。
義勇は、見て見ぬふりを出来ずにとっさに百合を受け止めに行った。
その様子にゆきは、気を取られ義勇が手放した木刀が宙を舞い自身に飛んできているのに気づいていなかった。
「百合大丈夫か?」
義勇は、百合を抱えていた。
と、同時にすごい勢いの木刀が、ゆきの右腕に直撃した。
「っっっ////」
しかしその瞬間を義勇は見ていなかった。
痛さに顔を歪めたゆきだが声を出さなかった。
そのまま義勇に気づかれないように井戸のある場所に移動した。
二人から見えない位置に移動して初めて声を出した。
「いったぁい…。折れてる…」
苦痛で堪らなくてその場で気を失った。
百合は義勇が助けてくれた事が嬉しくてぎゅっと首にしがみついた。「怪我はないか?」「はい。」
百合を縁側に座らせ手合わせの続きをしようと庭をみた。血のついた木刀が転がっているだけだった。