第14章 義勇の婚約者〜冨岡義勇 時透無一郎
ゆきは、なかなか寝ることが出来ず縁側で星を見ていた。
最近無一郎くんも会いに来てくれなくなった。多分警備の担当地区が遠くなったから時間がないんだと思う。
いつの間にか縁側で、眠ってしまっていた。
誰かが髪を撫でてくれているような感触がする…。
気がつくと布団に寝ていた。驚いて起き上がろうとしたら誰かの腕に引き寄せられた。
義勇が、隣で眠っていたのだった。
ゆきは、驚いてお腹に絡まる義勇の腕から逃れようとした。
こんなところ百合さんに見られたら大変だよ…。
義勇は、すやすや寝息を立てていた。少し揺すっても起きてくれない。
「師範起きてください。」
「……」
ますますゆきを抱きしめて離さない。
その時
「あの!ゆきさん義勇さん見ませんでしたか?」
百合が部屋の前に立っていた。
「わ、わたし寝てたんで知りません。」
とっさに嘘をついてしまった。百合が部屋から離れていった。
義勇は相変わらずゆきを抱きしめたまま離さなかった。
気がつけばゆきも疲れもあって一緒に眠っていた。
朝目が覚めると、義勇の姿はもうなかった。
少し寝不足なまま道場に行った。
「昨夜はどこにいらしてたんですか?」
「どこでもいいだろう」
「ずっと待ってたんですよ」
百合と義勇の声だった。入るのが気まずすぎて入り口でもたもたしていた。
義勇に勢いよく扉を開かれた。
「何してる稽古始めるぞ」
百合に構うことなく義勇は稽古を、始めた。
百合は涙を、溜めて出て行った。そしてゆきの横を通り過ぎる時にぼそっと何かを言って道場を出た。
「出ていけ」
そう言われたのだった。
その日は、稽古が終わるとゆきは町に出た。
ゆきside〜
これからごはんは、外で食べよう。お風呂も近くに銭湯とかあるし…。
あまり百合さんの迷惑にならないようにしよう。
夜は寝るだけにして…。
辛いな…お世話になるの…。
義勇は、ゆきがまだ屋敷に帰って来ないことを心配していた。
「義勇さん何か落ち着きないですね?」
百合が不思議そうに質問した。
「もしかしてあの子の心配ですか?」
百合は義勇の隣に座った。肩に頭を預けた。
「二人きりがいいです。」