第14章 義勇の婚約者〜冨岡義勇 時透無一郎
朝からゆきは、義勇に稽古をつけてもらっていた。
「踏み込んでかかって来い!」
「はい!」
いつもと変わらぬ光景だがたた一つ違うのが、百合が側で見ていることだった。
「休憩にしよう。」
義勇が腰かけたとたん、手ぬぐいと水を渡した。
「お疲れ様です」
ゆきは、邪魔しないように少し離れた場所に移動しようとした。
「汗をふけ。風邪引く」
百合が手渡した手ぬぐいで、ゆきの首筋の汗を義勇が拭いてきた。
「だ、大丈夫です!お二人でお話し、しててください。」
義勇は、遠くはなれていくゆきの背中をじっと見ていた。
夕方辺りから台所から、いい香りがしてきた。百合が夕飯を作っていたからだった。
義勇と午後の稽古を終えた後、夜は警備に出る義勇のお供をすることにゆきはなっていた。
「夕飯食べたらすぐに出るぞ」
「はい。」
食事をしに部屋に入った。
「ん?」
百合がニコニコして座っている。そしてお膳がもう一つしかなかった。
「ゆきの食事は?」
「はい。ゆきさんのお部屋に用意してます。」
「いつも一緒に食べてる。」
百合は困った表情をしてゆきを見てきた。
「あっ、私ひとりで食べます。」
慌てて部屋を出た。
ゆきside~
そうだよね。普通おかしいよね。あの二人と一緒に食べるとかおかしいよね。
それに、まず一緒に住んでることすらおかしい。
離れないとダメだよね。もっと。
ーーーー
二人は夜の警備に出た。
「すまない。さっきは」
「私が気がつかなくってすいません。」
義勇が振り返りゆきに近づいた。
「俺は結婚などしない。」
すごく真剣な目で見てきた。じりじり壁際に押される。
「俺はゆきが好きなんだ」
義勇の顔がゆきに近づく…。ゆきが身体を押し退けた。
「お、鬼が出るかもしれないです。警備を続けましょ。」
鬼は、見つからず屋敷に戻った。
「お帰りなさい」
百合は義勇に飛びついた。「一人じゃ寝れないからおきてました。」
ゆきは、黙ってお風呂に向かった。
湯船に浸かりながら何故かため息がでた。
ゆきside~
私は無一郎くんが好きなんだよ。なのに何だろうこの胸のざわめきは…。