第75章 水柱と継子 霞柱と継子〜冨岡義勇 時透無一郎 不死川実弥
しかし、そこで耳にしたのは義勇の残酷なまでに穏やかな声だった。
「お前は本当に強い…安心できる」
自分には向けられなかった信頼の言葉。美月を称賛し、自分を「不安の種」だと告げられたような気がして、ゆきは胸が苦しかった、伸ばしかけた手をそっと下ろした。
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不死川も含め一旦自身の屋敷に戻るようにと命令が下り、
無一郎と、ゆきは治療のため蝶屋敷に数日身を寄せることになった。
隠達が、怪我をしている二人を馬車の荷台に誘導している時、片手が痛くて乗るのにゆきは、もたもたしていると、体がふわっと浮いた…。
「俺も蝶屋敷に後から行くから…」
抱き上げて荷台に乗せてくれたのは義勇だった。
それを見ていた先に乗っていた無一郎が、ゆきの手を引き自分の膝の上に抱き寄せた。
「冨岡さん気安く触らないでゆきに…僕は許してないからゆきの手の怪我を放置した事」
「その事なんだが…ゆき本当にすまない…」
ゆきは、義勇に淋しい表情でニコッとだけした。
馬車は、蝶屋敷へと向かって行った…。
荷台の上では…
「ゆき僕の膝の上においでよ」
「隠の人が見てるし、嫌です…」
「さっき冨岡さんと話した時は来てくれたのに?」
あれは…義勇さんが美月さんと会話してるの聞いちゃって…私は本当に、足手まといの継子なんだって確信して…それで…つい、無一郎くんに…
「冨岡さんに、嫉妬させたかったとか?」
「ち、違う!」
違う…そんなんじゃない…
手の甲がジリジリと焼けるように痛い…
「ゆき…普通に話してくれるようになったね。僕と、このまま婚約解消も取り消してまた婚約者に戻ってくれる?」
「そ、それは…」
何故か、頭に義勇さんの顔が浮かんだ。
ゆきは、何も答えず黙り込んでしまった…。
無一郎は、隠達に見えないようにして怪我していない方の手を繋いだ。
「む、無一郎くん?」「見えないからいいでしょ」
義勇は、遥か遠くに見える馬車の荷台から見える二人の姿をじっと見つめていた…。