第72章 真実〜冨岡義勇
義勇の屋敷に到着してもなお、ゆきの震えは止まらなかった。
美月の放った言葉が、ゆきの心を縛り付けている。
義勇は静かに、ゆっくり優しくゆきを寝所に横たえた。
自らの羽織を脱ぎ捨て、怯えるゆきの肩を大きな手で包み込む。
「義勇、さん…私、やっぱり、汚い…ですよね」
「違う…」
義勇はゆきの頬を両手で挟み、逃げ場をなくすように顔を近づける。
「あんな言葉、聞く必要はない。お前がどれほどの覚悟で、どれほどの痛みを堪えてきたか…俺は知っている」
義勇は、今まで押し殺してきた独占欲と愛情が止まらなくなっていた。
無一郎の婚約者であったゆきを、一歩引いた場所で見守ってきた。
だが、この感情はもう止められない。
「もう誰にも渡さない。時透にも、誰にもだ…。お前の傷も、その痛みも、すべて俺が背負う」
義勇はゆきの額、目蓋、そして震える唇に、甘く、深い口付けを落とした。
ゆきは、それを振り払う力もなく義勇にされるがままだった。
優しい手つきでゆきの髪を撫でゆきを、ぎゅっと抱き締めた。
「今夜隣にずっと居る…お前は誰よりも清らかだ。だから今日は取り敢えずもう休め…」
義勇さんの声が優しい…耳元で暖かい…。
こんな私に優しくしてくれてありがとう…
‐‐‐
一方、取り残された無一郎の隣では、美月が心配そうに寄り添っていた。
僕が、ゆきを追い詰めた……?
美月の「明るさ」を癒やしだと感じていた自分への嫌悪感。
屋敷に会いに来てくれた時に、冷たくあしらってしまった後悔…
それと同時に、脳裏を離れないのは「山賊」という言葉だ。
あの時、ゆきを襲った惨劇。血鬼術?
「何か、決定的なことを見落としている気がする…」
無一郎は自分の傍らで当たり前のように寄り添う美月を振り払い立ち上がった。
目の前が真っ暗になるような喪失感の中で、無一郎は初めて、自分が守るべきだったものの正体に気づき始めていた。
「ゆき…あんなに想っていて揺るぎなかったのに…僕は…何で、こんな…酷いことを…ゆき…やっぱり僕はまだ子供だったんだ…」
後悔の気持ちだけが募るだけだった…