第68章 偽りの日々〜冨岡義勇 時透無一郎
夜の蝶屋敷ー
ゆきは、無一郎から貰った花を眺めながら過ごしていた時だった、部屋の扉を叩く音にゆきは、びくっと反応し返事をした。
「は、はい!」
「俺だ…ちょっと話せねェか?」
声の主は不死川だった。ゆきは、ほっと胸をなでおろした。
不死川は、不器用な笑顔を作るとゆきの側まで近づいてくる…
「隣座っても平気かァ?」
「あっ…はい不死川さんなら大丈夫みたいです。体が強張らないみたい…」
不死川は、遠慮がちに隣に座った。隣に座るゆきは、少し緊張気味に見えたが目が合うとニコッとほほえんでくれる。
「笑うと可愛い…時透も、お前が笑うと思って贈ったんだろうよ。…いい花だ」
そう言って不死川は、山賊に踏みにじられたゆきの足首に、熱い掌をそっと重ねた。
「足の痛みはどうだァ? 怖かったな。お前は何も汚れてなんかねェ。俺には、その花よりお前の方がずっと綺麗に見えるぜ」
耳元で囁かれる甘い声。
その言葉にふいに赤らむゆきの頬…
「ゆっくり休め。ここは安全だから安心しろ」
そう言い残し不死川はゆきの頭を撫でて部屋を出た。
不死川が去った後、残された体温の余韻に浸っていると、再び廊下から足音が聞こえてきた。
「失礼する」
扉が開いて現れたのは、義勇だった。
彼は部屋の隅で立ったまま、じっとこちらを見つめていた。
ゆきは少し戸惑いながら「義勇さん…」と名を呼んだ。
義勇は無言のまま歩み寄ると、不死川が座っていた場所に、少し間を空けて腰を下ろした。
彼の視線は、ゆきが抱える花と、先ほどまで不死川の手が触れていた足首へと向けられる。
「不死川が来ていたのか」
「えっ?はい…」
「先程すれ違った」
義勇は、そっとゆきの足首に触れた…ゆきの体がびくっと反応する。
「すまない…嫌か?」
「い、いえ…義勇さんも大丈夫みたいです。」
義勇は、その言葉が引っかかった…。
「頬が赤いが不死川と何を話していた?」
ゆきは、手に持っていた花に目を落とし言われた言葉を思い出した…が、義勇には「ゆっくり休め」と言われた事しか話さなかった。