第47章 師範と継子〜冨岡義勇
「あれ?ゆき庭を歩けるようになったの?」
蝶屋敷の庭をゆきは、散歩していた。振り返れば大好きな無一郎の姿があった。
「わぁ!来てくれたの?無一郎くん」
ゆきは、嬉しそうに駆け寄った。
無一郎は、あれから任務がない日や、暇を見てよく蝶屋敷に顔を出してくれるようになった。
「無一郎くんが、来てくれるかもしれないと思ってお花を摘んでいたの。ちゃんとしのぶさんがここのお花は、摘んでも良いって言ってくれたんだよ。」
無一郎は、一生懸命話してくれるゆきが可愛かったしすごく新鮮だった。
思えばあまりこんな風に、ゆっくりと過ごしたことがないような気がする。
君が、笑いながら花を摘んで僕がそれを後ろから眺める…。
「無一郎くん。どうぞ」
花束を、君は僕に渡してきた…。
「お屋敷に飾ってください!」
花束から見える君の笑顔は、どんなものよりも神々しくて愛おしい…。
僕の胸がぎゅっと苦しくなる…。
花束と君を一緒に、僕は抱きしめていた。
「む、無一郎くん?お花が潰れちゃうよ…」
無一郎は、慌てて離れた。
「あっ!ごめん。ありがとう飾るよ」
ゆきは、ちょっと悲しい顔をした
「凛に捨てられないようにしてね…しのぶさんに貰った事にしてね…」
凛は、まだ無一郎の屋敷に住んでいた。両親はとっくに良くなり蝶屋敷から出ている。
だが、凛は変わらずに無一郎から離れなかった…。
その理由は…
ゆきは、聞かされていなかった…。
「無一郎くん背が高くなったね。私よりだいぶ大きくなったね」
「もっともっと大きくなるよ…冨岡さんより大きくなる」
ゆきが、ちょっと困った顔をした。
無一郎は、花束を横によけてゆきとくちづけを、交わした。
「また来るね。寒くなってきたから屋敷の中に入って」
ゆきは、無一郎を見送った。
無一郎は、花束を大事に持ちながら屋敷に帰って行った。
ゆきが、自分の部屋に戻ると義勇が来ていた。
「師範…」
「近くに来たので様子を見に来た」
相変わらず、義勇さんは優しくしてくれる…。
私に…