第44章 消えた薬〜冨岡義勇 時透無一郎
嫌いになった…?嫌いになるわけないじゃない。毎日毎日毎日…愛おしいと思っているよ。
ゆきを、抱きしめて口づけしていっぱい愛したいと思っている。
好きだよ…大好きだよ…ゆき…
愛してる
「何も答えてくれないんですね…」
僕の体を抱いていた腕から力が抜けていった…ゆきが泣いているのがわかった。
胸が苦しすぎて、やっぱりゆきを抱きしめようと思って振り返った。
驚いたゆきが、涙をいっぱい溜めて目も赤くなりこちらを見た。桜色のかわいい唇が泣くのを我慢するために震えていた。
「ゆき様!!」
ゆきを探していた隊士の一人が来たのだった。
「ゆき」
義勇の声に、ゆきはハッとした表情をして慌てて涙を拭い胸に手を当てて自分を落ち着かせていた。
「水柱様!鬼は斬られたようです」
隠がすぐに義勇に報告した
「時透が斬ったのか?」
「ええ…」
「ゆき怪我はないか?」
義勇は、ゆきの側に行き心配そうに尋ねた。
「任務も終わったので、僕は帰りますね」
無一郎が、帰ろうと歩き出した。
すると、ゆきが無一郎に向かって叫んだ。
「今まで、ありがとう…」
頭を何か硬いもので叩かれたくらい強い衝撃だった。胸が痛くてぎゅっと締め付けられて、息がしにくかった。
これって…別れの言葉なのか…?
僕への別れの言葉なの?後ろからゆきが、子供みたいに声に出して泣く声が聞こえてきた。
みんな居るのに…隊士達も居るのに…冨岡さんもいるのに…構わずにゆきは泣いていた…。
振り返ると、隊士達も冨岡さんも驚いてみんなゆきの周りであたふたしていた。
僕は、ゆきの所に行けなかった 行きたかった。
行って、抱きしめて涙を拭ってあげたかった。
苦しい…胸が痛い…苦しすぎる…でもゆきは、もっと苦しいはず
わけも分からず僕に、避けられて急に冷たくされて…。
昨日僕は、また君の幻覚をみた…そして幻覚の君を抱いてしまった。
君が、恋しすぎておかしくなっちゃったのか…眠る事が怖くなってきた
「ゆき帰ろう」
冨岡さんがゆきを、抱き上げて連れて帰った。僕はまだ動けないでいた。