第5章 情が消える時〜時透無一郎、冨岡義勇
頬を指で撫でる感触がする。義勇さんが戻って来て撫でてくれてるんだ。
安心するなぁ、、、。この香り、、、いつもの香り、、、。この香り、、、
誰だっけこの香り、、、。
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目覚めた場所は、蝶屋敷だった。目の前には蟲柱のしのぶさんがいた。
「大丈夫ですか?もう2日ほど眠っていたんですよ。ひどく高熱も出ていました。」
えっ?そんなにも
「すぐに時透君を呼んできますね」
ドアを出る前にしのぶは振り返った。
「時透君眠らずにずっとあなたの隣にいたんですよ。健気だったわ。あの子にもそんな感情あったんですね」
師範がずっと付いていてくれたの?
義勇さんは、、、そっか私とは関係ないから居るほうがおかしいか。
バンっ!!
勢いよくドアが開いた。
「師範、、、」
「心配させないでよ、、、ずっと眠ってるんだから。早く起きろよ」
「ご、ごめんなさい」
無一郎は、ぎゅっとゆきを抱きしめた。
この匂い、、、
あーそうか、、、あの晩の香り、、、義勇さんが戻って来てくれて側に居てくれたんじゃなくて師範の香りだったんだ。
急に悲しくなった。
「うっうっ、、、えっえ、、」
ゆきは子供みたいに泣きじゃくった。
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「あらあら冨岡さん盗み聞きはよくないですね」
扉の外に義勇がたっていた。
「胡蝶。」
「時透君は、すぐに任務で今朝蝶屋敷に戻った所です。昨夜までゆきさんに付いていたのは冨岡さんです。いいんですか?時透君が付いてた事になっていますよ」
「え?何故だ」
「、、、なんだか面白くないので私が嘘をついちゃいました。」
義勇は、意を消して部屋に入って行った。
「冨岡さん?なんの様ですが?」
無一郎が冷たく言い放った。
「ひっく、ひっ」
ゆきが泣いているのがわかった。
「出ていってください。」
無一郎がゆきをぎゅっと抱きながら言った。
「いや、俺は今ゆきと話がしたい。」
無一郎の抱きしめる力は、ますます強くなった。
「私も義勇さんと話したいです。」
無一郎の腕の中から弱々しくゆきが答えた。
「師範、いいですか?」切ない眼差しで訴えてくる。
無一郎は黙って部屋を出た。