第38章 秘密が露見する時〜時透無一郎 冨岡義勇【R強】
その時強い風が、吹いてきた。ゆきの髪が綺麗になびいた…。
なびいて首筋が、見えた…。
赤い跡が二つ…
あーなるほど、そうか…そうだったな…時透の屋敷にお前は居るんだった。
抱かれたのか?
昨夜…
「痛いっ」
ゆきは、先程の風で目に砂埃が入ったらしく目を閉じていた。
するといきなり首筋に唇が触れた…そしてきつく吸われた
慌てて離れて義勇を見た。
「跡がついてたから…俺もつけた」
「義勇さん!!」
ゆきが、泣きそうな顔して首元を抑えている。
「大丈夫だ。時透のつけた跡の上につけたから分からない」
そう言い残して義勇は、手合せをする広場の方へ足早に歩いて行った。
〜〜〜
ゆきは、手合せしていても、ずっと無一郎の事が気になっていた。
ぱんっ///
隙だらけのゆきが持つ竹刀が、飛んでいった。
「何している!?集中しろ」
心此処にあらずのゆきに、義勇は今日の稽古は終わりだと告げた。
このまま続けても危険なだけだからだ。
広場から義勇の屋敷までの帰り道ゆきが口を開いた。
「師範…」
「何だ?」
「あの…無一郎くんの事なんですが」
「時透の事?」
「私達の秘密に、気付いているかもしれません…」
義勇は、黙って歩き続けた。ゆきは、そんな義勇をじっと見ていた。
すると突然立ち止まった。
「知っている」
「え?」
「時透から言われた。お前の匂いが俺に移っていると…」
ゆきは、無一郎に言われた事を思い返した…。
「私も…言われました。義勇さんから私の香りがするって…」
ゆきが、その場に止まって動けなくなった。
義勇が、ゆきの肩を抱いた。
「大丈夫か?歩けるか?」
ゆきは、慌てて義勇を押し退けた。
「だ、だめ…近づいたらまた香りが移ったら」
慌てふためくゆきを義勇は、落ち着かせた。
「大丈夫だ。今日は時透に俺は会わない」
ゆきは、俺が一歩近づくたびに離れていく…嫌だ…抱きしめたい…。
「明日からその香りをつけてくるな」
「駄目です。これは、お母様が女性の嗜みだと選んでくれた香りなんです。自分が記憶を無くしていた時もこの香りだけは付けていたんです…」