第37章 甘い誘い…〜冨岡義勇 時透無一郎【R強】
朝日に照らされて誰かが立っていた。逆光でよく見えなかった。
誰?
見える位置に、ゆっくりゆきは歩いて移動した。
長く後ろに、一つに結った髪が風になびいていた。
こちらに、ゆっくり歩み寄ってきた。
「義勇さ…ん」
「昨夜あんな事があり家族が、恋しくなったんではないかと思い先に来て花を供えた。」
「なんで…私の気持ちが分かるんですか?」
「お前しか見ていないからな」
甘い声…青く澄んだ瞳…
「来い!抱きしめたい」
甘い誘い…
「早く…」
足が、動く…駄目だってわかっているのにあなたの甘い誘いに私は…
義勇の胸の中に飛び込んだ。
「今はご両親を、思い出して沢山泣け。俺が全部受け止めてやる」
「わぁーん//」
ゆきは、小さな子供のように泣いた。涙が枯れてしまうほど義勇の胸で泣いた。
「お父様、お母様に会いたいよ…」
俺もお前の気持ちが痛いほどわかる…。俺も蔦子姉さんや錆兎に会いたい…。
長い時間ゆきは、泣いた…。
その間義勇は、ずっとゆきの背中をさすってやった。
髪も沢山撫でてやった。
「そろそろ落ち着いたか?」
義勇は、泣き止んで静かになったゆきの顔を覗き込んだ。
「は…い」
少し残っていた涙を指で拭ってやった。
「俺を頼っていいから甘えろ」
ゆきは、申し訳なさそうな表情をした。
そんな都合が良いことばかり出来ないよ…義勇さん…。
「そろそろ屋敷に戻って稽古だ」
「はい」
ゆきは、義勇の後を追って屋敷に向かった。
木の陰に誰かが隠れていた…。
花を持った無一郎だった。
無一郎も、ゆきがきっと両親に会いたくなっているだろうと思い
花を用意してこの場所に、今到着したところだった。
花を握りしめる無一郎…
「ゆきは、何であんなに冨岡さんに甘えるんだろう…素直に…」
もしかして、君は冨岡さんに惹かれ始めているの?