第36章 逢引と移り香〜時透無一郎 冨岡義勇
義勇の屋敷では、稽古は…始まっていなかった。
玄関で義勇がゆきを抱きしめたまま離してくれなかった。
「義勇さん?もうお昼になっちゃいます…そろそろお稽古しませんか?」
「もう少しこのままで」
「もう随分たちますよ…本当にお稽古したいです。師範!」
その言葉に義勇は、我に返りゆきを離してくれた。
ゆきは、準備するために道場に向かった。
中庭に出た時に、寛三郎がこちらを見ていた。
「義勇ヲ呼んでコイ〜」
ゆきは、慌てて義勇を呼びに行った。
「寛三郎どうした?」
「任務、任務〜」
どうやら近くの街に鬼が出た情報があるので、向かって調査しろとの事だった。
「ゆきは、まだ完治していないので来なくていい」
「わかりました」
「今日はもう稽古を付けてやれないから時透の屋敷に戻れ。」
ゆきが帰ろうとした時に義勇に呼び止められた。
「こちらに来い」
ゆきは、何だろうと思い義勇の元へ行った。
義勇は縁側に腰掛けていた。腕を引かれ膝の上に座らされた。
「な、な、な、何するんですか?」
寛三郎は、見ないふりをしている。
「任務に向かう前は気が立つんだ。鎮めてほしい…」
ゆきの両頬に手を添えられ口づけされた。
「んっ…」
抵抗して胸元をトントン叩いた。少しして満足したのか解放してくれた。
「こんな事ぱかり困ります…」
義勇は、ゆきを抱きしめた。
「悪かった」
悪いのは私の方だ…義勇さんの気持ちを知ってて都合のいい時は甘えて、今は、こうやって突き放す…。
「そろそろ出発する」
義勇は、走って鬼が出た街に向かって行った。
〜〜〜
ゆきが無一郎の屋敷に戻った時に任務に出る無一郎と遭遇した。
「あれ?ゆき早いね」
「師範に任務が入ったので帰るように言われました」
「ふ~ん。そうなんだ」
無一郎は、ゆきに近づいて頬に触れた。
「行って来るね」
そう言ってゆきに口づけした。何度も…唇を堪能するかのような口づけだった。
無一郎はペロッと舌で自分の唇を舐めた
「美味しい…」
ゆきは、真っ赤になった。そんなゆきに手を振り無一郎は任務に出発した。